はじめに
群発頭痛は、一定期間(群発期)に集中して激痛が起こる「反復性」が一般的ですが、稀に群発期が長引いたり、間隔が短くなったりする「慢性化」の兆候を示すことがあります。また、頭痛の収束に伴い、めまいや耳鳴りといった内耳症状を呈するケースも存在します。当院で経験した、慢性化の兆候とメニエール症候群を合併した症例を提示し、その関連性を検討します。
- 症例提示:40代 男性
- 既往・経過:
2024年6月、1.5ヶ月の群発期に対しイミグラン自己注射のみで対応されていたが、当院受診後より予防療法を開始。 - 今回の経過(2025年10月~):
2025年10月17日に群発期が開始。例年通りであれば11月下旬に収束する予定でしたが、12月までずれ込みました。12月10日に一旦収束したと判断し治療を終了しましたが、わずか2週間後の12月22日に左眼周囲の激痛が再発。群発期の間隔が極端に短縮しており、「慢性化への移行期」と判断しました。
- 治療方針の転換
通常、第一選択薬となるA)ですが、長期使用が慢性化の一因となる可能性を考慮し、本症例では以下の処方設計を行いました。
- C+B+A(漸減・切り替えを視野に)
年末年始を挟むため、即効性のあるBで痛みをコントロールしつつ、Cを導入することで慢性化の阻止を試みました。
- 群発頭痛収束後のメニエール症状の出現
2026年1月24日、頭痛が収束に向かう中で、患者様より「群発頭痛が終わる頃に必ず激しいめまいがする」との訴えがありました。
- 検査所見: 自発眼振検査にて「右への一方向性眼振」を確認。
- 対応: メニエール症候群と診断。マンニトール点滴の実施と内服加療により、症状は速やかに軽快しました。
- 考察:群発頭痛と耳症状の関連性
国際頭痛分類の旧基準(ICHD-2)では随伴症状に「耳閉感」が含まれていましたが、現行の基準(ICHD-3)では除外されています。しかし、臨床現場では本症例のように、頭痛と耳症状が密接に関連するケースを散見します。
- 三叉神経・血管反射の関与:
群発頭痛の主座である三叉神経第一枝の過興奮が、自律神経系(副交感神経)を介して内耳の血管透過性に影響を与え、内リンパ水腫(メニエールの本態)を誘発している可能性が考えられます。 - 収束期の自律神経の揺り戻し:
激痛という強烈な交感神経刺激から解放される「収束期」に、自律神経のバランスが急激に変化することが、内耳へのストレスとなっている推論も成り立ちます。
- 結語
本症例は、群発頭痛の慢性化阻止という課題に加え、頭痛収束期の「メニエール症状」という新たな視点を与えてくれました。頭痛が治まるタイミングでめまいや耳閉感が出現する場合、それは単なる偶然ではなく、群発頭痛という疾患の一部である可能性があります。当院では、頭痛そのものの消失だけでなく、こうした地続きの症状についても注視し、治療にあたっています。