【コラム】あなたの頭痛、セルフケアはできる?

「頭痛で仕事に集中できない」「頭痛くらいで仕事を休めない」といった悩み。実は、日本には多くの人々がこの問題を抱えているようです。
この記事では、日本人のどれくらいの人が頭痛という悩みの種を持っているか、実態調査を見ながら、セルフケアでできることや、クリニックを受診した方がいいケースについてお話しします。

1-1.なんと!日本人の3人に1人が頭痛持ち

2011年に第一三共ヘルスケア社が20〜50代の男⼥800名に実施した「日本人の『痛み』実態調査」によると、実に日本人の約4人に1人が週1回以上の頭痛を経験しています。月に1回以上の頭痛が現れる⼈は約3⼈に1⼈(34.8%)であり、その方々は自分を「頭痛持ち」だと自覚しています。

頭痛がよく起こるのは、どのような場面なのでしょうか。

頭痛のよく起こる場面を多い順に見てみると、「ストレスがたまっているとき」(40.6%)、「寝不⾜のとき」(39.1%)、「⼆日酔いのとき」(20.5%)、「長時間PCを見ていたとき」(20.4%)と続きます。「季節の変わり目」(18.3%)、「寝すぎたとき」(15.0%)などにも頭痛が起こっており、実にさまざまです。

1-2. アンケートで分かった頭痛の対処トップ3

頭痛が起きてしまったときの対処法にはどのようなものがあるのでしょうか。「日本人の『痛み』実態調査」のトップ3を見てみると、「我慢する」(55.9%)、「寝る」(43.8%)、「鎮痛薬を服⽤する」(51.3%)が挙げられました。

多くの方々が頭痛に「我慢」と「睡眠」で対処している背景には、84.8%の方々が頭痛の対処法については「詳しくない」と自覚していることが関係しているようです。

また、頭痛によって仕事や家事の生産性や能力が低下し、頭痛を原因として1日当たり平均149.0分(2時間29分)もの時間を無駄にし、QOL(生活の質)が低下しているということも報告されています。

1-3. 頭痛はどうやって「治療」する?

多くの日本人を悩ませていることが明らかな頭痛。医療現場での「頭痛治療」の実態はどうなっているのでしょうか。「頭痛外来」や「頭痛専門医」を置いている病院が増えつつあり、「治療薬」も症状や目的に合わせて細かく処方されるようになってきています。最近の頭痛の分野の治療体制は充実してきていると言えるでしょう。

このように、頭痛に関する医療が進みつつあります。時間の損失が大きく、QOLを下げてしまう「頭痛をひたすら我慢する」という対処法は止めて、医療機関を受診することをお勧めします。

次の項で頭痛を詳しく見ていき、治し方や対処法についてを整理して、頭痛への理解を深めていきましょう。

2. 緊急性のない頭痛と命の危険を伴う頭痛

頭痛の治し方や対処法を知るには、まずはその前提として、頭痛の種類と原因を知ることが大切です。

頭痛は大別すると、命に別状のない「一次性頭痛」と、緊急性があり、すぐに対応する必要のある「二次性頭痛」とに分けられます。命に別条のない「一次性頭痛」には、脳の疲労や興奮が原因で起こる片頭痛と、血流の悪化や肩こりが原因で起こる「緊張型頭痛」、原因不明の「群発頭痛」という3種類があります。

命の危険を伴う「二次性頭痛」には、特に名称のついた症状はありませんが、特徴としては「日増しに痛みが悪化する」「今まで経験したことのないほど強い痛みを感じる」「頭痛以外の症状も見られる」といった特徴があります。頭痛を我慢しがちな日本人ですが、我慢してはいけない頭痛もあるので、ご自身に今どの頭痛が起きているのかをとっさに判断できるようにしておくといいでしょう。

3. 頭痛のセルフケア、どんなことができる?

それではセルフケア方法を見ていきます。緊急性のない一次性頭痛に関しては、自分で原因を把握して、セルフケアによって痛みを緩和できる場合があります。一つ一つ見ていきましょう。

3-1. 片頭痛 

脳の疲労や興奮が原因で起こる片頭痛に対しては、痛む部分を冷やしてクールダウンさせます。

3-2. 緊張型頭痛

血流の悪化や肩こりが原因で起こる緊張型頭痛を和らげるには、入浴したり、蒸したタオルなどを用意して、
首や肩のあたりを温めます。ストレッチやマッサージも血流を改善できるのでお勧めです。

片頭痛は、痛む部分を冷やして脳の疲労や興奮を抑えることで痛みを軽減させることができますが、一方で、温めて血流の悪化や肩こりを解消することで痛みを軽減させられるのが、「緊張型頭痛」です。頭痛の種類によって、セルフケアの方法が正反対になるので、注意が必要です。

3-3. 群発頭痛

群発頭痛は通常1~3カ月間(それ以上の期間の場合も)にわたって規則的に起こります。この期間のことを「群発期」と呼びます。この時期には、アルコールを摂取すると確実に頭痛が起こるため、飲酒を避けることが大切です。また、群発頭痛のある人には喫煙者が多いことから、特に群発期は禁煙することが推奨されます。飛行機搭乗などの気圧の影響を受けること、熱いお風呂やサウナ、辛い食事、激しい運動なども控えた方が良いでしょう。

上記全ての頭痛に共通して大事なことは、自律神経のバランスを崩さないように心がけることです。毎日できるだけ決まった時間に起床、就寝するなど、規則正しい生活を心がけることが基本です。

4. 頭痛の予防法

そもそも頭痛にならないようにする方法や、頭痛の痛みが出る前に頭痛の発生を食い止める方法というものはあるのでしょうか。
頭痛予防の方法について見ていきましょう。

4-1.頭痛の種類によって異なる予防法

緊急性のない一次性頭痛の中のどのタイプの頭痛であっても、適切な睡眠時間を確保し、十分な休養をとり、
心にも体にもストレスをためないようにすることが基本の予防法と言われています。ただし、頭痛になってしまったときの
対処法と同じように、頭痛別に違った予防法もあります。

片頭痛を予防するには、血流を良くしすぎることは禁物のため、入浴はしないほうが良いとされています。「緊張型頭痛」を予防するには、片頭痛とは逆に、むしろ入浴して血行を良くしたほうが予防になります。予防法も頭痛の種類によって対処法が真逆になるケースがあるので、注意が必要となってきます。

4-2.鎮痛薬は予防に効くの?

「頭痛がひどくなる前に薬を飲みたい、でも大丈夫かな」と気になる方もいらっしゃるのではないでしょうか。

痛みがひどくならない軽度のうちに服用すると、鎮痛効果を得られやすいでしょう。しかし、これは「痛くなる前」ではなく「痛みが軽いうちに」ということです。予防として服用することは、鎮痛薬の不適切な連用により、「薬物乱用頭痛」につながる可能性を高めてしまいます。

※薬物乱用頭痛
頭痛のために鎮痛剤を飲む回数が増えることで症状が悪化・慢性化してしまうこと。頭痛薬を常用していると脳が痛みに過敏になり、ちょっとした刺激で強い痛みを感じます。結果として頭痛が起こる回数や痛みも増え、症状を悪化させてしまいます。

薬物乱用頭痛についてはYouTubeチャンネルでも紹介しています。

さいごに

セルフケアや市販の痛み止め薬では頭痛が治まらない場合には我慢せずに、頭痛の症状だけでも受診することをお勧めします。
当クリニックの「チェックリスト」に答えていただくと、どのような症状があれば来院の目安になるかを知ることができます。
是非、チェックしてみてください。


◆頭痛チェックリストでチェックしてみよう!
https://akiramenai-zutsu.com/

この記事の監修者 あきらめない頭痛クリニック院長田村正年

1957(昭和 32)年 9 月 15 日、⾧崎県佐世保市生まれ。
1976(昭和 51)年、佐世保西高校卒、1985(昭和 60)年、鹿児島大学医学部卒。
1987(昭和 62)年、県立大島病院、1989(平成元)年、静岡東てんかんセンター、1990(平成 2)年、鹿児島県立北薩病院勤務。
1992(平成 4)年。脳神経外科専門医取得。同年、加治木大井病院脳神経外科部⾧、1995(平成 7)年、金丸脳神経外科勤務。同年、博士号取得。
1997(平成 9)年、徳田脳神経外科部⾧として勤務。
2001(平成 13)年、田村脳神経外科開業。
2023(令和 5)年 11 月20日、福岡市博多区に「あきらめない頭痛クリニック」を開院。

<所属学会>
国際頭痛学会、日本頭痛学会、日本東洋医学学会、日本てんかん学会、 脳神経外科学会評議員、脳卒中の外科学会会員、日本脳血管内治療学会会員、 日本脳神経学会コングレス会員