【コラム】子どもは頭痛の辛さを言語化できない?家庭でできること。

「頭が痛い」とお子さんが言ってきたとき、親御さんとしてはどうしてあげれば良いのかわからなくて、不安になることが多いのではないでしょうか。「頭が痛いから学校を休みたい」とお子さんが言うと、「仮病じゃないの?」と疑ってしまう親御さんもいらっしゃるようです。子供の頭痛、その原因はもしかすると生活習慣やストレスかもしれません。頭痛の種類や原因により対処法は異なりますので、これから解説する内容からお子さんの症状がどれにあてはまるのかをまずは知りましょう。

1.子どもの頭痛の種類と特徴

まず、頭痛の種類とそれぞれの特徴を知り、頭痛を訴えるお子さんへの対処法を考えていただきたいと思います。

1-1.頭痛の種類

頭痛と一口に言っても非常に種類が多く、その症状もさまざまです。頭痛は一次性頭痛と二次性頭痛とに大別され、それぞれに次のような種類と症状があります。

一次性頭痛とは原因を特定できない頭痛であり、片頭痛と緊張性頭痛とに分けられます。

片頭痛は発作性が強く、ズキンズキンと脈打つような痛みが1~72時間ほど続きます。体を動かすと悪化したり、光や音に敏感に反応したり、吐き気や嘔吐を伴うこともあります。一方、緊張性頭痛は痛みがだらだら続き、締め付けられるような感覚を覚えたり、首・肩のこりや吐き気を起こしたりすることがあります。

二次性頭痛とは原因を特定できる頭痛で、その原因は発熱を伴うウイルス性の感冒や、発熱とともに吐き気や嘔吐、首の硬直、意識障害が現れる髄膜炎、発熱および吐き気、嘔吐、意識障害の起こる脳炎、発熱に咳と嗅覚障害を伴う副鼻腔炎などがあります。

1-2.一次性頭痛と二次性頭痛のおおよその見分け方

二次性頭痛は時に生命に関わることがあるため、親御さんには頭痛の原因を早く見つけていただきたいと思います。一次性頭痛か二次性頭痛かを見分ける方法には、次のような段階的な目安があります。

①発熱を伴うか。

②突然に起きたか。

③今まで経験したことのないほどの痛みか。

④痛みの頻度や程度が増していくか。

⑤麻痺を伴って、しゃべりにくくなったり歩きにくくなったりしていないか。

上記の②~⑤の場合には、病院で脳のCTスキャンやMRI、レントゲン、採血検査などを経て、疾患の有無を確かめることが必要です。上記のいずれにも該当しない場合は一次性頭痛と判断できるでしょう。

2. 一次性頭痛の原因となるもの 

二次性頭痛は原因となる疾患の治療をすれば治まりますが、原因を特定できない一次性頭痛は治療法がわからない点で親御さんは心配されるのではないでしょうか。ここでは一次性頭痛について、その症状と原因と考えられるもの、治療を試みるものについてご説明します。

2-1.片頭痛

片頭痛と言えば大人の頭痛と思われがちですが、頭の痛みを抱えて外来を訪れる子どもに最も多いのがこの片頭痛です。その子どもの年齢は乳幼児から思春期までと幅広いです。片頭痛は遺伝性が強く、特に母親の遺伝を受け継ぐことの多い疾患です。

頭痛が起こる前に視野が狭まる、見ようとするところがぼやける、ジグザグの線やキラキラした光が見えるなど、視覚の異常が現れることがあります。片頭痛はこめかみあたりにズキンズキンと脈打つような痛みであり、子どもの場合は頭の両側に痛みを訴えることが多いです。体を動かすと痛みが強くなったり、頭痛と並行して顔面蒼白や吐き気、嘔吐を伴ったりすることがあります。また、テレビなどの音や光を嫌がったり、匂いに敏感になったりする場合もあります。

普段は元気な子が黙りがちになる、光や音を避けるために静かな暗い部屋に行きたがることは片頭痛を起こしているサインであると考えられます。片頭痛が起こる原因には、ストレスや睡眠不足、気圧の変化、ブルーライト、食べ物(チョコレートやチーズなど)が挙げられます。

2-2.緊張性頭痛

緊張性頭痛は首、背中のこりを伴い、締め付けられるような痛みやずんと重い痛みです。片頭痛のような強い症状ではありませんが、だらだらと続くのが特徴で、時に吐き気をもよおすことがあります。

緊張性頭痛の原因は、習い事や学校生活から受ける肉体的・精神的ストレス、オンラインゲームやスマホの長時間使用などです。

2-3. 子どもの一次性頭痛の治療法

子どもの一次性頭痛の治療法には共通するものがあります。それは、生活習慣の改善となる早寝早起きです。

平日の予定が学校やおけいこ事で過密になってストレスを感じていないかどうか、子どもの日常生活を見直し、それらをシンプルにしていくことが頭痛の改善へとつながります。

3. 頭痛を訴えた1時間後には元気に!でも、仮病と疑わないことが大事!

子どもの一次性頭痛(片頭痛、緊張性頭痛)は生活習慣やストレスが原因で起こります。

例えば、朝起きて「頭が痛いから学校を休みたい」「授業中に保健室に行きたい」と言ってくるものの、発熱などの症状はなくて1時間もすると元気になることから、教師や親御さんから勉強をさぼりたいとか学校に行きたくないから仮病を使っているのではないかと疑われることがあります。

しかし、片頭痛の場合は痛みの持続時間が短いため1時間ほどで治まってしまう子どもがいるのです。そんなときに「仮病じゃないの?」と言われると、頭痛のつらさを周囲の大人に理解してもらえないと思い、子どもは傷ついてしまいます。

頭痛の有病率は東京都荒川区(2009年)の小中学生を対象にした調査によると、片頭痛が9.9%(男9.5%、女10.2%)、緊張性頭痛が4.6%(男4.5%、女4.8%)でした。頭痛などの体調不良によって学校を休んだことのある子どもの症状は、片頭痛が54.7%、緊張性頭痛が45.4%で、頭痛のない子どもより高い割合で学校を休んでいることがわかりました。

このように近年、頭痛を持つ子どもは増えているものの、大人と違って子どもは頭痛の痛みを上手に表すことができません。

したがって、普段と様子が違ったときには「どうしたの?」と確かめ、痛みを訴えるときには「どんなふうに痛いの?」と聞いてあげてください。大人からこのような声をかけてもらえることで、子どもは「頭が痛いことをわかってもらえた」と安心します。

また、頭痛持ちの子どもは、真面目に頑張るタイプが多いです。周りの期待に応えようとしてストレスを抱え、頭痛が発現しても極限まで痛みを我慢してしまいます。その結果、ストレスと頭痛とで疲れ果て、勉強に対する意欲が低下し、登校しても保健室から出られなくなったり、不登校になったりする場合もあります。

「たかが頭痛」と思わず、周りの大人がそのつらさを理解して、優しい声かけや適切な対処をし、生活環境を整えてあげ、そして治療へと導いていくことが非常に重要なのです。

さいごに

大切なお子さんの体と心に向き合うために、子どもの頭痛の特徴や治療法を知り、適切な対応をしてあげてください。子どもたちが頭痛のつらさから解放され、元気で笑顔あふれる姿が一日でも早く戻ってきますようにと願っています。

この記事の監修者 あきらめない頭痛クリニック院長田村正年

1957(昭和 32)年 9 月 15 日、⾧崎県佐世保市生まれ。
1976(昭和 51)年、佐世保西高校卒、1985(昭和 60)年、鹿児島大学医学部卒。
1987(昭和 62)年、県立大島病院、1989(平成元)年、静岡東てんかんセンター、1990(平成 2)年、鹿児島県立北薩病院勤務。
1992(平成 4)年。脳神経外科専門医取得。同年、加治木大井病院脳神経外科部⾧、1995(平成 7)年、金丸脳神経外科勤務。同年、博士号取得。
1997(平成 9)年、徳田脳神経外科部⾧として勤務。
2001(平成 13)年、田村脳神経外科開業。
2023(令和 5)年 11 月20日、福岡市博多区に「あきらめない頭痛クリニック」を開院。

<所属学会>
国際頭痛学会、日本頭痛学会、日本東洋医学学会、日本てんかん学会、 脳神経外科学会評議員、脳卒中の外科学会会員、日本脳血管内治療学会会員、 日本脳神経学会コングレス会員