【ブログ】「頭痛は我慢するもの」を打破!FUJITSUプロジェクトとは

頭痛は多くの方が経験したことのある身近な痛みです。一方で、頭痛に関して、関心が低いことや、我慢する傾向にあることの問題がよく指摘されます。本記事では、日本人の頭痛の実態データを提示しつつ、頭痛を我慢する日本人が多い理由とそこから生じる問題点を解説します。最後に、富士通による頭痛への取り組み「FUJITSUプロジェクト」について触れていきます。

1. 日本人の頭痛の実態

第一三共ヘルスケア株式会社(本社:東京都中央区、以下「第一三共ヘルスケア」)の調査によると、昨年頭痛を感じた⼈のうち、週に1回以上の頭痛経験がある⼈は26.3%、自分の頭痛がひどいと思う⼈は31.1%、そして自分を頭痛持ちだと思う⼈は34.8%にのぼることが分かりました。

頭痛の発生要因としては、「ストレス」が40.6%、「寝不足」が39.1%、「二日酔い」が20.5%、「長時間のPC閲覧」が20.4%で、上位を占めています。

頭痛の対処法として最も多い回答は「我慢する・過ぎ去るのを待つ」が55.9%。次いで「鎮痛剤を服用する」が51.3%、「横になる・寝る」が43.8%となっています。ここから読み取れるのは、多くの人が頭痛に悩まされており、その要因は常に身近にあること。それにもかかわらず、多くの人が「我慢」や「寝る」といったように、科学的で対処ができていない、または適切な処置を知らないということです。

※引用元:20代~50代の男女800名に聞く、日本人の「痛み」実態調査
( https://www.daiichisankyo-hc.co.jp/site_loxonin-s/assets/images/understand/pdf/research_201202.pdf )

2. 頭痛を我慢することで生じる主な問題

さらに、第一三共ヘルスケアでは、頭痛が生じることによる弊害も調査しています。「頭痛によって、仕事や家事の生産性や能力は低下すると思うか」という質問に、低下すると回答したのは全体の73.3%と過半数にのぼりました。

他にも、「頭痛(生理痛)による能力や態度の低下の度合い」を問う項目では、「自分に対する自信度」が53.1%、「優しさ」が45.0%、「前向き思考度」が44.9%、笑顔が「42.7%」と回答があるように、頭痛によって日々の生活の質、いわゆるQOL(クオリティ・オブ・ライフ)が低下していることが分かります。

頭痛を我慢することは、主に以下の問題を生じさせます。

・生活の質(QOL)が低下する

・仕事の生産性が低下する

生活の質は、頭痛の直接的な「痛み」だけでなく、頭痛が発生するかもしれないという「不安」や、頭痛による予定や約束の「制限」などが、低下の要因です。また、仕事の生産性の低下要因は、普段通りの業務ができない「プレゼンティズム」や、頭痛が原因で欠勤してしまう「アブセンティズム」などが該当します。これらは個人の生産性だけでなく、チームや組織、企業全体の生産性低下にも繋がるため、企業問題の1つとしても対策が必要です。

頭痛の我慢は、決して推奨されることではありません。日々の生活や仕事に支障がでないように、鎮痛剤の服用や医師への相談など、適切な処置を行う必要があります。

3. 日本人はなぜ頭痛を我慢するのか?

日本人は、頭痛を我慢しやすいといわれますが、その理由は「国民性」「軽視」「理解不足」の3つの理由に集約できます。それぞれ詳細に見ていきましょう。

3-1. 痛みを我慢する「国民性」

第一三共ヘルスケアの「痛みに対する考え方」では、「日本人が痛みを我慢する国民性」との回答が最も多く、全体の78.4%もの人がそう感じている結果となりました。

「石の上にも三年」ということわざもある通り、我慢は美徳という文化が深く根付く日本では、痛みは耐えるものです。頭痛も例外ではなく、我慢すべきものと認識している人が多いのでしょう。

3-2. 頭痛に対する「軽視」

例えば片頭痛は多くの人を悩ませる頭痛の代表例ですが、労働現場では周囲の理解不足によって、軽視されやすい傾向にあります。また女性特有の生理痛に起因する頭痛も、男性からの理解が低いと、軽視されてしまうことがあるでしょう。

周囲が頭痛に対して「それくらいで」と感じる人が多いと、頭痛は表に出さず、我慢に繋がります。

3-3. 痛みを我慢する問題の「理解不足」

頭痛を我慢することで生じる「生活の質の低下」や「労働生産性の低下」に対する理解不足も、多くの人が我慢する要因の1つです。例えば、頭痛を原因とするプレゼンティズムは、企業全体で見た場合、多くの損失を発生させる可能性が高くなります。しかしこの問題に気が付いていない企業の現場では、頭痛問題に取り組むという意識が生まれません。

頭痛を我慢することが様々な問題を発生させることを、個人および企業が認識する必要があるでしょう。

4. 富士通の頭痛への取り組み「FUJITSU頭痛プロジェクト」とは

日本人の頭痛に対する理解度がまだまだ低い中で、日本企業の素晴らしい取り組みがあります。富士通株式会社(以下、富士通)が行った「FUJITSU頭痛プロジェクト」です。

当プロジェクトは、富士通が実施した頭痛の実態調査結果にて、頭痛による休業(アブセンティズム)やパフォーマンス低下(プレゼンティズム)は、企業の損失として大きいことが判明し、始動しました。

内容は、富士通が国内のグループ企業の従業員向けに実施したe-Learningの受講を通して、頭痛に関する正しい知識の習得を促し、さらに頭痛患者へのビデオセミナーや専門医への頭痛オンライン相談、頭痛体操などを実施するもの。結果、頭痛の改善を経て、生活の質や仕事の生産性の向上を図るとともに、頭痛患者が働きやすい職場づくりを推進しました。

期間は2019年7月~2022年2月の約1年半実施され、対象者の総数は約7万人と、富士通グループ総がかりの大型プロジェクトです。

4-1. 成果

e-Learning受講後のアンケートでは、全体の9割を超える受講者が「有益だった」と回答。頭痛が日常生活への支障が大きい病気であるという認識を持つ人は、受講前は46.8%と過半数を割っていましたが、受講後は70.6%と大幅に増加しました。さらに富士通クリニック頭痛外来を設置することで、気軽に相談する環境を設け、初心患者数はプロジェクト後半にかけて大幅に上昇しています。(参考:https://pr.fujitsu.com/jp/news/2022/03/2d.pdf)

これらの活動を通して富士通は、国際頭痛学会世界患者支援連合(GPAC)から「頭痛対策プログラム」の世界的リーダー企業に認定され、2022年3月2日に認定証を授与。企業として世界初の認定を受けることとなりました。頭痛問題に立ち向かう先駆者になっただけでなく、成果創出も達成できることとなったのです。

さいごに

日本人は頭痛に対する課題感が低く、我慢をすることで乗り越えようとしますが、それは一昔前の考え方です。我慢による損失を理解し、適切な対応が必要となります。

そんな中で、富士通の「FUJITSU頭痛プロジェクト」は、日本だけでなく、世界的にも価値のある取り組みであったと言わざるを得ません。今後も当プロジェクト以外にも、頭痛問題に取り組む企業・組織が増えていき、頭痛は我慢するものから、処置しなければならない症状へと変わっていくことを祈っています。

この記事の監修者 あきらめない頭痛クリニック院長田村正年

1957(昭和 32)年 9 月 15 日、⾧崎県佐世保市生まれ。
1976(昭和 51)年、佐世保西高校卒、1985(昭和 60)年、鹿児島大学医学部卒。
1987(昭和 62)年、県立大島病院、1989(平成元)年、静岡東てんかんセンター、1990(平成 2)年、鹿児島県立北薩病院勤務。
1992(平成 4)年。脳神経外科専門医取得。同年、加治木大井病院脳神経外科部⾧、1995(平成 7)年、金丸脳神経外科勤務。
同年、博士号取得。

1997(平成 9)年、徳田脳神経外科部⾧として勤務。
2001(平成 13)年、田村脳神経外科開業。
2023(令和 5)年 11 月20日、福岡市博多区に「あきらめない頭痛クリニック」を開院。

<所属学会>
国際頭痛学会、日本頭痛学会、日本東洋医学学会、日本てんかん学会、 脳神経外科学会評議員、脳卒中の外科学会会員、日本脳血管内治療学会会員、 日本脳神経学会コングレス会員