【コラム】閃輝暗点の目のチカチカ。片頭痛との関係性

頭痛がおこる直前に、目の前で光がチカチカして一時的にモノが見えなくなったことはありませんか?
ここでは片頭痛の前兆症状の一つである閃輝暗点(せんきあんてん)についてお話します。

1.閃輝暗点とは 

視界にキラキラ・ギザギザした光の模様が見えたあと一時的に視野の一部が暗くなって見えなくなる。しばらくして症状がおさまったと思ったら今度は頭痛が…それは閃輝暗点という脳の血管の収縮・拡張が引き起こす脳の虚血症状の可能性があります。

1-1. 閃輝暗点とはどんな症状?

片頭痛が起こる前兆として有名な症状の一つに「閃輝暗点」があります。

閃輝暗点は、視野の中央部に輝く点が現れ、最初は一部だけだったぎらぎらとした稲妻のような光の模様が四方に拡大したあと、だんだんとその場所が暗く見えなくなる(暗点)視覚症状のことです。「キラキラした光が見える」「水玉のような模様」「ギザギザした稲妻のような光が走っている」など表現はさまざまですが、輝く部分と暗くなって見づらい部分とが混在し、ときには視野の半分ちかくが暗転して見えなくなることもあります。

一般的には30分以内に症状がおさまることがほとんどで、続いて片頭痛をともなうケースが多いことから、片頭痛の前兆としてよく知られています。閃輝暗点は、人によって頻度は異なりますが、周期的に起こるのが一般的です。また、片頭痛をともなう典型的なタイプは年齢とともに発症回数が減る傾向にあります。

1-2. 片頭痛と閃輝暗点の割合

片頭痛は「前兆のある片頭痛」と「前兆のない片頭痛」の2種類に分けられます。前兆のある片頭痛は全体の10-15%で、この前兆の90%以上が閃輝暗点だといわれていますので、片頭痛を発症した人全体の10人に1人の割合で閃輝暗点を経験している人がいるということになります。

2. 閃輝暗点の原因 

2-1. メカニズム

閃輝暗点の発症メカニズムははっきりとはまだ解明されていませんが、「大脳皮質神経細胞の活動性異常が、視覚中枢がある大脳の後頭葉から始まり少しずつ周辺に広がっていく」との説が有力で、血管の収縮を起こす作用があるセロトニンの関与は間違いないと言われています。

何らかの理由で血中にセロトニンが多量放出される

 ↓

視覚を司る大脳の後頭葉視覚領の動脈が一時的に収縮し脳の機能低下を招く

 ↓

脳の虚血症状として、閃輝暗点が生じる

 ↓

ついで血管が拡張することで二次的な脳の血流障害が起こって、片頭痛を引き起こす

という仕組みで発生すると考えられています。

閃輝暗点は視覚症状としてあらわれます。眼球の異常によるものではなく大脳に生じた神経症状ですので、両目共に同じ光の映像が見え、目を閉じても消えないのが特徴です。

もし、きらきらした光や、しばらく視野が暗くなる症状が左右どちらかの目だけにあるような場合は、眼球の硝子体や網膜、視神経など眼に原因があると考えられます。

2-2. 閃輝暗点はこんなときに起こりやすい

それでは、どんなときにこの症状は起こるのでしょうか。

閃輝暗点は、睡眠不足、精神的ストレス、肩こり、疲労、感情変動、飲酒、喫煙などが原因になるといわれています。仕事が忙しすぎて寝不足の日々が続いているときなどに発症しやすいのはこのためです。また、緊張が解けて一息ついた時に出現することもあり、中には週末の度に目がチカチカして片頭痛に襲われるという人もいらっしゃいます。

また、食品でいうと、セロトニンが脳内で合成される際の材料を多く含むチョコレート、ピーナッツ、チーズや、血管拡張作用のあるコーヒーや赤ワインをたくさん摂取したあとも閃輝暗点が起こりやすくなります。

さらに、最近の研究で片頭痛が「まぶしい光」「強い光」によって引き起こされることがわかったことから、閃輝暗点もまた「強い光」によって引き起こされると考えられるようになりました。

3. 閃輝暗点の対処法 

もしも閃輝暗点を発症したら、どんな対応をするのがベストなのでしょうか。

3-1. 閃輝暗点が起きたら

目がチカチカするなど閃輝暗点の症状が疑われたら、まずは安静にしましょう。

短時間とはいえ視界が遮られたり物が見えなくなったりするのでなにか作業をすると危険をともないます。また、その後片頭痛を併発する可能性を考えても症状がおさまるまで静かにしておくほうがよいでしょう。経験的に頭痛が起こることを予測できる場合には、あらかじめ鎮痛剤などを服用すると安心できます。

3-2. 治療法について

周期的に起こることが一般的な閃輝暗点ですが、閃輝暗点そのものに効果的な薬や治療法はないのが現状です。そのため、片頭痛をともなう閃輝暗点の場合は片頭痛の治療をすることが最善です。片頭痛の治療においては、頭痛外来などを利用することが効果的でしょう。

また、頭痛をともなわない症状の場合はつい放置しがちです。まれに脳梗塞や脳腫瘍、脳出血など脳の重大な病気の症状としてあらわれることがあるので注意し、気になる場合は脳神経外科などで精密検査をしてもらうことをおすすめします。

さいごに

症状が消失すれば基本的には頭痛以外に影響がないと言われている閃輝暗点ですが、頭痛は一度起こるとなかなか治らず、生活に大きな支障が出てつらいものです。ここで例にあげた環境的な要因、食品の摂取など心当たりがある場合はそれらに対処することで、少しでも発症頻度を抑えたいものです。

この記事の監修者 あきらめない頭痛クリニック院長田村正年

1957(昭和 32)年 9 月 15 日、⾧崎県佐世保市生まれ。
1976(昭和 51)年、佐世保西高校卒、1985(昭和 60)年、鹿児島大学医学部卒。
1987(昭和 62)年、県立大島病院、1989(平成元)年、静岡東てんかんセンター、1990(平成 2)年、鹿児島県立北薩病院勤務。
1992(平成 4)年。脳神経外科専門医取得。同年、加治木大井病院脳神経外科部⾧、1995(平成 7)年、金丸脳神経外科勤務。同年、博士号取得。
1997(平成 9)年、徳田脳神経外科部⾧として勤務。
2001(平成 13)年、田村脳神経外科開業。
2023(令和 5)年 11 月20日、福岡市博多区に「あきらめない頭痛クリニック」を開院。

<所属学会>
国際頭痛学会、日本頭痛学会、日本東洋医学学会、日本てんかん学会、 脳神経外科学会評議員、脳卒中の外科学会会員、日本脳血管内治療学会会員、 日本脳神経学会コングレス会員