
コラム
夜間の激痛と全身のほてり——長年、群発頭痛と向き合ってきた50代男性の治療事例
【はじめに】
群発頭痛は、その凄まじい痛みから「生活の質」を著しく低下させる疾患です。今回は、20代の頃から約30年にわたり群発頭痛と闘ってこられた患者さんの事例をご紹介します。
- 【ご相談時の症状】
患者さんは50代の男性です。20代の頃に「群発頭痛」と診断され、以来、約2年おきにやってくる「群発期」に悩まされてきました。
今回の発作は12月中旬から始まり、以下のような特徴がありました。 - 決まった時間に起こる: 寝てから約1時間半後に、激痛で目が覚める。
- のたうち回るような痛み: 片方の目をえぐられるような強い痛み。
- 自律神経の症状: 涙、鼻詰まりに加え、顔や体がカッと熱くなる「ほてり」を伴う。
- 独自の対処法: あまりの熱さに耐えかね、冬の夜に薄着のまま外へ飛び出し、体を冷やすことで痛みを紛らわせていました。
【当院での診療とアプローチ】
この患者さんは、これまでも他の医療機関で予防療法を受けておられましたが、十分な効果が得られていない状態でした。当院では以下の点に重点を置いて治療を再構築しました。
- 予防療法の最適化
群発頭痛の予防薬は、適切な種類と「十分な量」の調整が重要です。これまでの治療内容を見直し、現在の体調や症状に合わせてお薬の量を再調整しました。 - 急性期治療(発作時の対応)
どうしても起きてしまう激しい発作に対しては、最も効果が期待できるトリプタン製剤(自己注射等)を適切に併用する計画を立てました。
【医師からのメッセージ】
群発頭痛は「いつ終わるかわからない恐怖」との闘いでもあります。この患者さんは、当院で99人目の群発頭痛の患者さんとなりました。
「これまでの治療で効果が今ひとつだった」「夜も眠れず辛い」という方も、お薬の調整や新しい治療の選択肢によって、症状をコントロールできる可能性があります。お一人で抱え込まず、ぜひ一度ご相談ください。
。最近のAIで群発頭痛の治療を尋ねたらほぼ私の知識、経験とほぼ同じレベルで驚きました。結果を下記に記します。
群発頭痛の治療について
2025年現在、群発頭痛の治療は「激しい痛みを即座に抑える急性期治療」と「発作の頻度や期間を減らす予防療法」の2つを組み合わせて行われます。
- 急性期治療(発作が起きたときの対処)
激しい痛みに対し、即効性のある治療が優先されます。
- スマトリプタン(イミグラン)皮下注: 最も推奨される第一選択薬です。自己注射キットが普及しており、発作時に自分で投与可能です。
- 純酸素吸入療法: 医療用酸素(100%酸素)をフェイスマスクで毎分7〜10L、15分間吸入します。副作用がなく、在宅での使用(在宅酸素療法)も保険適用されます。
- 点鼻薬: 自己注射が困難な場合、スマトリプタンの点鼻薬が用いられることもあります
- 予防療法(発作を起こさないための治療)
群発期(頭痛が続く期間)の開始とともに、発作を抑えるために導入されます。
- ベラパミル(ワソラン): 予防療法の中心的な薬剤で、日本のガイドラインでも推奨されています(適応外使用)。
- 副腎皮質ステロイド(プレドニゾロン): ベラパミルが効き始めるまでの数週間の「つなぎ」として、短期集中で使用されます。
- 抗てんかん薬や気分安定薬: 炭酸リチウムやトピラマートなどが、難治性の場合に検討されます。
- 最新の治療トピック(2025年時点)
- 抗CGRP抗体(ガルカネズマブ/エムガルティ): 2021年以降、反復性群発頭痛の予防薬として承認が進んでいます。月1回の高用量(300mg)注射により、約70%の患者で発作頻度が半減したという報告があります。
- アトゲパント(新規薬): 2025年10月の報告では、既存の治療に反応しない患者に対し、片頭痛予防薬のアトゲパントが有効である可能性が示唆されています。
- 非薬物療法: 薬物療法で効果が不十分な場合、後頭神経刺激(ONS)などの外科的処置が検討されることがあります。
- 日常生活で避けるべきこと
群発期(発作が起こりやすい期間)には、血管を拡張させる以下の行動を控えることが強く推奨されます。
- 飲酒: 少量のアルコールでも確実に発作を誘発します。
- 喫煙: 発作の悪化要因となります。
- 長風呂・サウナ・激しい運動: 体温上昇が引き金になります










