
コラム
「片頭痛」だと思っていた2ヶ月続く激痛。実は「群発頭痛」でした。
はじめに
「片頭痛と診断されて薬を飲んでいるけれど、なかなか良くならない」
そんな悩みを抱えて来院された、22歳女性のケースをご紹介します。長年、季節の変わり目の痛みに苦しんでこられましたが、詳しくお話を伺うと、真の病態が見えてきました。
- これまでの経過:高校時代から続く「季節の頭痛」
患者さんは高校生の頃から、毎年秋から冬にかけての「季節の変わり目」に頭痛が起こるようになりました。20代になってからは、年に2回(10月と12月など)頭痛の波が襲うようになり、一度症状が出始めると2〜3週間、ほぼ毎日痛みが続きます。
前医では「片頭痛」と診断され、スマトリプタンやリザトリプタン、ペレックス配合顆粒などが処方されていました。しかし、これらを内服しても期待するような効果は得られなかったそうです。
- 症状の特徴:1日3〜4回の「えぐられるような痛み」
今回の受診時にお聞きした症状は、非常に激しいものでした。
- 痛みの場所: 右側頭部や左側頭部(時期によって左右が入れ替わる)
- 痛みの性質: 頭の後ろを「えぐられるような」激痛
- 頻度: 1日に3〜4回、30分から2時間ほど続く
- 随伴症状: 吐き気、光・音のわずらわしさ、横になりたくなる感覚
- 専門医による診断のポイント:なぜ「片頭痛」ではないのか?
吐き気や光・音への過敏さがあるため、一般的な診断基準に照らすと「片頭痛」の項目をすべて満たします。しかし、私は「痛みの持続時間」に注目しました。
- 片頭痛: 通常、一度痛みが出ると4時間〜72時間続きます。
- 本症例: 30分〜2時間で痛みが引きます。
この「短時間の激痛が1日に何度も、数週間にわたって集中して起こる」という特徴は、片頭痛ではなく「群発頭痛」の疑いを強く示唆するものです。
群発頭痛の典型例でみられる「目の充血」「鼻づまり」「涙」などの自律神経症状は、この患者さんには現時点では見られませんでした。しかし、痛みのパターンや周期性は群発頭痛の診断基準に極めて近いと考えられます。
- 今後の治療方針
「典型的な症状がすべて揃っていない」ケースでも、隠れた原因を見逃さないことが大切です。まずは群発頭痛に対する標準的な治療を開始しました。
あわせて、ご自身でも「痛む時に目が赤くなっていないか」「鼻水が出ていないか」などを細かく観察していただくようお伝えしています。これにより、さらに正確な診断と、患者さんに最適化した治療へと繋げていきます。
。頭痛の診療ガイドライン2021 p290










