
お知らせ
70歳代女性の頭痛、浅側頭動脈の怒張と圧痛
- 症例:78歳 女性
主訴: 両側前額部の拍動性疼痛、血管怒張
既往歴: 特記すべきことなし(もし高血圧やリウマチ性多筋痛症があれば追記) - 現病歴:
X年7月、転倒により前額部を打撲。その後経過観察していたが、11月初旬より洗髪などの接触刺激を契機に両側前額部の疼痛が出現した。同時期、同部位に約1cm径の血管怒張を自覚。
近医にて頭部CTを施行したが、頭蓋内病変を含め有意な異常は指摘されず、その時点では肉眼的な血管怒張も消失していた。
その後、頭部全体の鈍痛に加え、両側前額部(浅側頭動脈前頭枝領域)の血管怒張が持続・増悪し、拍動性の痛みと明らかな圧痛を伴うようになった。巨細胞性動脈炎(GCA)を疑い神経内科を受診。臨床症状および検査所見に基づきGCAと診断され、現在ステロイド治療が開始されている。
- 血液検査: ESR(赤沈)亢進やCRPの上昇高度認める。
- 胸部動脈の血管壁の肥厚と増強を認める。
- 画像診断:造影MRIでの血管壁染まり。
- 随伴症状: 顎跛行(Jaw claudication)認める
- 、視力障害軽度低下と虚血性所見あり、体重減少認める。最近3㎏程体重が減った。
巨細胞性動脈炎
- 疾患の概要
- 病態: 主に50歳以上の高齢者に発症する、中・大型血管を標的とした全身性の自己免疫性血管炎です。
- 特徴的所見: 側頭動脈に炎症が好発するため、かつては「側頭動脈炎」と呼ばれていました。病理組織学的に、多核巨細胞を伴う肉芽腫性炎症が認められることが名称の由来です。
- 身体所見と症状
- 血管所見: 浅側頭動脈の怒張に加え、蛇行、索状の硬結、圧痛、拍動の減弱が典型的です。
- 頭痛: 新規発症の、これまでに経験したことのない持続的な側頭部痛が一般的です。
- 顎跛行 (Jaw Claudication): 物を噛む際に顎の筋肉が痛む症状で、診断における特異度が非常に高い所見です。
- 全身症状: 発熱、倦怠感、体重減少のほか、リウマチ性多発筋痛症(PMR)の合併(肩や股関節の痛み・こわばり)が約半数に見られます。
- 診断と最新の基準(2022 ACR/EULAR分類基準)
現在、臨床現場では2022年に改訂された分類基準(ACR/EULAR)が広く用いられています。
- 必須条件: 診断時年齢 50歳以上。
- 側頭動脈生検での陽性、またはエコー(超音波)での「ハローサイン(血管壁の浮腫)」:+5点。
- 赤沈(ESR)≥ 50 mm/h または CRP ≥ 10 mg/L:+3点。
- 突然の視力障害:+3点。
- 判定: 合計6点以上でGCAと分類されます。
- 合併症と予後
- 失明のリスク: 眼動脈や後睫毛動脈の炎症による虚血性視神経症が原因で、適切な治療(ステロイド治療)が遅れると、数日以内に失明に至るリスクがあります。
- 公費助成: 日本では指定難病(告示番号41)に該当し、重症度基準を満たす場合は医療費助成の対象となります。










