【コラム】働き盛りの男性に比較的多い頭痛ー群発頭痛とは?
頭痛と一口に言ってもその原因はさまざまで、その対処法も異なります。中には原因の解明されていない頭痛もあり、頭痛薬が効かないものも。そんな怖い頭痛と上手に付き合うためには、自分の頭痛がどのタイプに当てはまるのかを知っておくことが大切です。頭痛にはどんな種類があるのか、それらにはどんな原因や特徴があるのかを見ていきましょう。
1.頭痛の種類
頭痛は、原因となる病気が存在しないのに頭痛を繰り返す一次性頭痛と、何らかの病気によって引き起される二次性頭痛という2つに大別することができます。それぞれの特徴を見ていきましょう。
1-1一次性頭痛とは
これは頭痛そのものが病気と言われていて、頭痛の原因となる病気は存在しないにもかかわらず何度も頭痛を繰り返すので、慢性頭痛とも言われています。この頭痛に代表的なものとして①片頭痛、②緊張型頭痛、③群発頭痛という3つがあり、これらの原因には主に生活習慣やストレスが関係していると言われています。
1-2二次性頭痛とは
病気が原因となって引き起こされる頭痛のことで、その病気によっては命に関わったり後遺症が残ったりすることもあるので注意が必要です。早期に原因を特定して治療したほうが良いため、受診をお勧めします。
2. 頭痛の原因
原因がある程度は解明されている頭痛について、その原因と症状について見ていきましょう。
2-1. 片頭痛
片頭痛は、脳の血管が急激に拡張して起きることが多く、脈動に合わせて頭の片側(もしくは両側)がズキズキと痛むのが特徴です。痛み始めると光や音を不快に感じたり、吐き気や嘔吐を伴ったりすることがあり、頭を動かすと頭痛がひどくなります。その痛みは数時間から長いときには3日程度持続する場合があり、日常生活に支障の出ることもあります。
主な原因には、寝過ぎ、寝不足、女性ホルモンの変動、空腹、疲労、光や音の強い刺激などが挙げられます。
2-2. 緊張型頭痛
一次性頭痛の中で最も多いと言われているのが緊張型頭痛で、この頭痛に悩まされている人は日本に約2,000万人いると推計されています。後頭部や頭の両側、肩や首の筋肉が緊張することが原因です。症状としては、頭がギューっと圧迫される、締めつけられるというような痛みがありますが、我慢できないほどではありません。その痛みは30分から長いときは1週間続く場合があります。
主な原因は精神的・身体的ストレスであり、コンピューター操作などで長時間同じ姿勢をとり続けている人に起こりやすい頭痛です。
3.原因がまだ特定されていないとされる群発頭痛とは
群発頭痛は、一次性頭痛の中で一番痛みの激しい頭痛です。片側の目の奥やこめかみにかけて「目の奥をえぐられるような」と表現されるほどの激しい痛みを起こすのが特徴です。20〜40歳代の男女や、年齢を問わず男性に多く、一度起こるとしばらくの間(1〜2カ月)は毎日続きます。頭痛は1日1〜2回、就寝直後や明け方などの決まった時間に起こることが多く、15分〜3時間(平均は1時間)続きます。また、頭痛以外に頭痛の起きている側の結膜の充血、流涙、鼻づまり、鼻水、まぶたの腫れなどの症状を伴うことがあります。
3-1. 群発頭痛の原因
群発頭痛のはっきりとした原因はまだわかっていませんが、何らかの原因によって視床下部が刺激を受けると、三叉神経の周りにある血管が拡張されて引き起こされるという説があります。血管の拡張を誘発する原因としては、過剰なアルコール摂取や喫煙、気圧の変化などが挙げられます。
3-2. 群発頭痛の発生期間
頭痛発作が連日起こる時期を群発期、頭痛発作が落ち着いている時期を寛解期と呼びます。このサイクルが1回で終わる場合もあれば、群発期と寛解期を繰り返しながら数年〜数十年にわたって続く場合もあります。完治する治療法はまだ見つかっていません。
(参考)https://ubie.app/byoki_qa/clinical-questions/2t0996xxnqzh
3-3. 群発頭痛の診断基準(ICHD-3)
群発頭痛の診断には、世界共通のものとして、国際頭痛学会のICHD-3という診断基準が用いられています。下記の症状を繰り返していても、医療機関でのCTやMRIなどの画像検査や血液検査などで頭の中にその原因となる病変が認められない場合、群発頭痛の可能性が高いと言えるでしょう。
A.B~D を満たす発作が5 回以上ある
B.(未治療の場合に)重度~極めて重度の一側の痛みが眼窩部、眼窩上部または側頭部のいずれか1つ以上の部位に、15~180 分間持続する
C. 以下の1項目以上を認める
①頭痛と同側に少なくとも以下の症状あるいは徴候の1項目を伴う
a) 結膜充血または流涙(あるいはその両方)
b) 鼻閉または鼻漏(あるいはその両方)
c) 眼瞼浮腫
d) 前頭部および顔面の発汗
e) 縮瞳または眼瞼下垂(あるいはその両方)
②落ち着きのない、あるいは興奮した様子
D.発作の頻度は1回/2日~8回/日である
E.ほかに最適なICHD-3の診断がない
(参考)https://iekuru-dr.com/blog/017/#ICHD-3
(参考)https://www.jhsnet.net/ippan_zutu_kaisetu_04.html
(参考)https://ichd-3.org/wp-content/uploads/2019/06/ichd3-Japanese_all.pdf
3-4. 群発頭痛の対処法
群発頭痛の発作に有効な治療には、主に下記の2種類があります。
・スマトリプタンの皮下注射
・高濃度の酸素吸入
酸素を吸入することで80%に改善が見られたというデータがあり、効果的です。
また、群発頭痛を予防することが大切です。群発頭痛は比較的発作の起こる時期を予想しやすい頭痛なので、事前にその発症を予防することができます。アルコール、喫煙、ニトログリセリン、ヒスタミンなどの物質、薬剤をできるだけ控えるとともに、カルシウム拮抗薬やステロイド剤などを適切に使いましょう。
(参考)https://iekuru-dr.com/blog/017/#i-10
(参考)https://smartdock.jp/contents/symptoms/sy063/
3-5. 注意!群発頭痛と間違いやすい頭痛
病気が原因で群発頭痛と似た症状を引き起こすものがあります。これらは命に関わることもあるため、下記のいずれの場合も速やかに受診することをお勧めします。
・くも膜下出血
くも膜と呼ばれる脳表面の膜と脳の隙間にある血管が切れて起こる出血です。今までに経験したことがないような激しい頭痛を伴うのが特徴です。その痛みをバットで殴られたような痛みと表現する方もいます。
・髄膜炎
細菌やウイルスなどによる感染を受け、脳の周りを覆っている髄膜に炎症が起こる病気です。頭痛だけでなく発熱や意識障害、首の硬直などの症状を伴うのが特徴です。
・脳出血
脳血管が裂け、その血管から流れ出た血液が脳の神経細胞を圧迫することで障害が起き、頭痛、手足のまひ、吐き気などの症状が引き起こされます。ただし、どのような症状が現れるかは出血した場所や血腫の大きさによって異なります。頭痛のほかに吐き気や嘔吐、手足の痺れなどを伴うのが特徴です。
・急性緑内障発作
眼圧(目の中の圧力)を調整する機能が低下し、急激に眼圧が上昇して、急性緑内障が引き起こされます。その際に、目の奥の激しい痛みや目の充血、視力障害が起こるのが特徴で、一晩で失明する可能性もあります。
さいごに
一口に頭痛と言っても、その症状を引き起こす原因はさまざまです。頭痛の種類を知り、原因や症状を見極め、少しでも不安に感じたら早めの受診をお勧めします。群発頭痛は、「原因が解明されていない」とはいえ、少しずつ研究やリサーチが進んでおります。海外論文情報を含め最新情報をキャッチアップしております。詳しくは当クリニックに来院された際に詳しくお伝えいたします。
この記事の監修者 あきらめない頭痛クリニック院長田村正年
1957(昭和 32)年 9 月 15 日、⾧崎県佐世保市生まれ。
1976(昭和 51)年、佐世保西高校卒、1985(昭和 60)年、鹿児島大学医学部卒。
1987(昭和 62)年、県立大島病院、1989(平成元)年、静岡東てんかんセンター、1990(平成 2)年、鹿児島県立北薩病院勤務。
1992(平成 4)年。脳神経外科専門医取得。同年、加治木大井病院脳神経外科部⾧、1995(平成 7)年、金丸脳神経外科勤務。同年、博士号取得。
1997(平成 9)年、徳田脳神経外科部⾧として勤務。
2001(平成 13)年、田村脳神経外科開業。
2023(令和 5)年 11 月20日、福岡市博多区に「あきらめない頭痛クリニック」を開院。
<所属学会>
国際頭痛学会、日本頭痛学会、日本東洋医学学会、日本てんかん学会、 脳神経外科学会評議員、脳卒中の外科学会会員、日本脳血管内治療学会会員、 日本脳神経学会コングレス会員